Shunji ICHIKAWA


市川俊治の「海外生活事典」


◇突然の年金資格喪失通知

 海外から国民年金に加入されている方への注意喚起の話です。

 2019年3月、カリフォルニアにお住まいのAさんから「突然日本の実家に年金事務所から“国民年金資格喪失の連絡と保険料の還付について“という手紙が届いて当惑している」旨の電話がありました。

 手紙の内容は「マイナンバーの登録がされていない方の資格記録の確認をおこなっています。その結果、お客様が海外にいることが判明したため、国民年金の資格喪失処理をしました。つきましては、資格喪失月以降の国民年金保険料は返却します。」というものです。

 現在、日本年金機構はマイナンバーの活用による事務の合理化を進めており、その一環でマイナンバー登録がなされていない年金加入者の加入資格のチェックを行っています。

◇多額の損失で年金が”消滅”

 その作業の中でAさんは日本を出国する際、転出届を市役所に提出されていることから海外居住が判明。海外からは任意加入の国民年金となります。しかしAさんは出国時に強制加入から任意加入への切替えの手続をしてなかったため国民年金法第9条2項(日本国内に住所を有しなくなったとき加入資格を喪失する)に基づき出国時に遡り資格喪失となってしまったわけです。その結果これまで海外に在住していた17年間に日本の銀行口座から自動引き落としされた保険料約303万円が還付(返却)となり、これまで老後のために積み立ててきた国民年金が解約となってしまう訳です。

 17年間支払った保険料相当分の年金を65歳から平均寿命の87歳まで受け取った場合の年金額合計約747万円から今回の還付金303万円を差し引くと約444万円の損失となってしまいます。

◇年金行政の硬直化

 Aさんの当惑はもっともであり、早速年金事務所へ連絡。関東信越厚生局総務課→社会保険審査事務室と窓口がかわり、やっとたどり着いた厚生労働省年金課に対して①年金加入者は法律をすべて理解しているわけではない。役所が海外に転出する際の任意加入への切り替え手続きの必要性を十分に広報していたか疑問である②本人は転出届を提出しており役所内で情報を共有せず保険料を受け取り続けたことは日本年金機構にも瑕疵が存在する③本件はマイナンバーの登録を契機に発生したが、この種の問題は半年間なりの経過措置期間(例えば6か月以内に切り替え手続きを行なえばOk)を設けるべき④その上で変更手続きをすれば保険料は国内外同じであることからも大きな事務負担とはならないのではーということを伝えました。

 厚生労働省年金局年金課では仰ることは分かるが、法律で海外に転出したら任意加入と法律で定められているので変更はできないとの回答でした。私からは、至急検討を要請し、後日再度電話すると伝えました。

 国民年金の保険料を海外にお住まいのお子さんの為に日本の親がコツコツと納めているケースが少なからず存在すると思われますので影響は大きい問題であると認識しています。


【市川俊治 Shunji ICHIKAWA】38年間の民間企業勤務(ニューヨーク・シカゴ駐在8年間)後、外務省改革の一環として始まった領事シニアボランテイア制度の第1期生としてニューヨーク総領事館、サンフランシスコ総領事館で各3年計6年間勤務。官と民の経験・知識を基に「海外年金相談センター」を設立し海外に在住する人々の「年金・国籍・老後の日本帰国」の相談などをE-Mail、電話等で受けている。